タスクの種類で紙とデジタルツールを使い分ける:煩雑さを解消し、ToDoを確実に完了させる手順
はじめに:ツール併用でToDo管理が煩雑になる課題
日々の業務を円滑に進める上で、ToDoリストは不可欠なツールです。多くの方が、紙のノートや手帳、そして様々なデジタルツール(タスク管理アプリ、スプレッドシート、カレンダー、チャットツールなど)を組み合わせて利用されていることと思います。しかし、これらのツールをただ漠然と併用しているだけでは、かえって管理が煩雑になり、タスクの見落としや重複、あるいはどのツールを見れば最新のToDoが把握できるのか分からなくなる、といった状況に陥りがちです。
特に、会議や割り込み対応が多く、自身のタスクに加えチームの進捗管理や部下への指示など、多岐にわたるタスクを同時に処理する必要がある方にとっては、管理ツールの最適化は喫緊の課題でしょう。紙とデジタルそれぞれの利点を活かしつつ、管理の煩雑さを解消し、ToDoを確実に完了させるためには、どのようなアプローチが考えられるでしょうか。
ここでは、タスクの種類に応じて紙とデジタルツールを適切に使い分け、それらを効果的に連携させることで、ToDo管理の効率と完了率を向上させる具体的な手順をご紹介します。
タスクの種類を棚卸し、ツール特性と紐づける
まず最初に行うべきは、ご自身が日常的に扱っているタスクの種類を明確にすることです。タスクは、その性質によって最適なツールが異なります。以下のような分類例を参考に、ご自身のタスクを棚卸し、どのような性質のタスクが多いのかを把握してください。
- アイデア創出・思考整理系タスク: ブレスト、企画立案、問題解決のための思考など、自由な発想や試行錯誤が伴うタスク。
- 定型・繰り返し系タスク: 日次・週次で行うルーチン業務、定期的な報告書作成、請求書発行など、手順が決まっているタスク。
- 情報収集・学習系タスク: 調査、読書、オンライン講座受講など、インプットが中心のタスク。
- 連絡・コミュニケーション系タスク: メール返信、チャットでの確認、部下への指示、関係部署との調整など、他者とのやり取りが伴うタスク。
- 会議関連タスク: 会議資料準備、議事録作成、会議での決定事項実行、次回会議の準備など、会議を起点・終点とするタスク。
- プロジェクト・長期タスク: 期限が長く、複数のステップや担当者が関わるタスク。
- 突発・割り込み系タスク: 予期せぬトラブル対応、緊急の依頼、部下からの相談による即時対応など、計画外に発生するタスク。
- 管理・レビュー系タスク: 自身のToDoリスト見直し、進捗確認、チームのタスク状況把握、部下の育成・フォローなど、管理職として必要なタスク。
次に、それぞれのタスク種類に対して、紙ツール(ノート、付箋、手帳など)とデジタルツール(タスク管理アプリ、カレンダー、表計算ソフト、チャットツール、プロジェクト管理ツールなど)のどちらがより適しているかを検討します。一般的に、それぞれのツールには以下のような特性があります。
- 紙ツールの特性:
- 自由度が高い(形式にとらわれず書ける、図やイラストも描きやすい)
- 素早く書き出せる(起動不要、電源不要)
- 一覧性が高い(ページをめくれば全体像や関連情報が見やすい)
- 物理的な存在感がある(目につきやすい)
- デジタルツールの特性:
- 検索・整理が容易
- リマインダー、通知機能
- 他者との共有・共同作業が可能
- 自動化・定型化が可能
- 集計・分析が可能
- 携帯性に優れる(デバイスがあればどこでもアクセス可能)
これらの特性を踏まえ、例えば「アイデア創出」には自由度の高い紙、「定型業務」にはリマインダーや繰り返し設定が可能なデジタル、「チームでのプロジェクト」には共有機能のあるデジタル、といった形で、タスクの種類とツールを結びつけていきます。
タスク種類別:紙とデジタルツールの具体的な使い分けと連携手順
タスクの種類とツールの特性を踏まえたら、具体的な使い分けと連携のルールを定めます。
1. アイデア創出・思考整理系タスク
- 使い分け: アイデアの初期段階や思考を巡らせる際は、自由度の高い紙(ノート、スケッチブック)をメインに使用します。形式を気にせず、思いついたことを書き殴ったり、マインドマップを描いたりします。
- 連携: 紙に書き出したアイデアや思考の断片は、必ず定期的にデジタルツール(Evernote, OneNote, Notionなどのノートアプリや、タスク管理ツールの特定リスト)に取り込みます。写真を撮って添付したり、テキスト化して転記したりします。これにより、紙の紛失リスクを減らし、検索性を高めます。具体的なアクションに繋がるアイデアは、デジタルToDoリストにタスクとして登録します。
2. 定型・繰り返し系タスク
- 使い分け: 繰り返しの設定や期日管理が必須となるため、デジタルツール(専用タスク管理アプリ、カレンダーのリマインダー機能)が最適です。
- 連携: 基本的にデジタルで完結させます。もし紙の手帳で日々のタスクを確認する習慣がある場合は、デジタルツールのToDoリストを日次レビューの際に紙に書き出す、あるいはデジタルカレンダーと連携させるなどして、確認漏れを防ぎます。
3. 連絡・コミュニケーション系タスク
- 使い分け: メールやチャットなど、発生源がデジタルツールであることが多いため、そのままデジタルで管理するのが効率的です。
- 連携: メールやチャットの特定のメッセージを直接ToDoリストに変換する機能があるツール(例: OutlookとMicrosoft To Doの連携、GmailとGoogle Taskの連携など)を活用します。機能がない場合は、タスク内容と関連情報(リンク先など)をデジタルToDoリストに転記します。口頭での依頼や相談から発生したタスクは、その場で紙(メモ用紙)に素早く書き留め、後で落ち着いてからデジタルToDoリストへ登録します。
4. 会議関連タスク
- 使い分け: 会議中のメモや即時対応が必要な事項は、紙(ノート)に手書きする方がスムーズな場合があります。決定事項や割り振られたタスクは、構造的に管理する必要があるためデジタルツール(タスク管理アプリ、プロジェクト管理ツール)へ移行します。
- 連携: 会議終了後、紙に取ったメモを見返し、決定事項やタスクを速やかにデジタルToDoリストに転記します。議事録をデジタルツールで共有している場合は、そこからタスクを抽出して自身のリストに加えるワークフローを確立します。
5. 突発・割り込み系タスク
- 使い分け: 突然発生するタスクは、その場で素早く記録することが重要です。この際、起動の手間がかからない紙(メモ用紙、常に手元にあるノート)が有効な場合があります。
- 連携: 紙に一時的に書き留めた突発タスクは、自身のToDoリスト(通常使用しているデジタルツール)に後で必ず転記します。この際、優先度や所要時間を考慮し、既存の計画との兼ね合いを見てリストに組み込みます。デジタルツールをすぐに起動できる状況であれば、直接デジタルに登録するのも良いでしょう。重要なのは「捕捉漏れを防ぐこと」と「適切なリストへ移行すること」です。
6. 管理・レビュー系タスク(マネージャー業務など)
- 使い分け: チーム全体の進捗把握や部下との1on1の準備など、複数の情報を統合したり、継続的に状況を確認したりするタスクは、デジタルツール(プロジェクト管理ツール、共有スプレッドシート、タスク管理ツールのチーム機能)の活用が効率的です。自身のToDoリストのレビューや計画立案は、俯瞰して考えたい場合に紙(ノート)を使うことも有効です。
- 連携: チームで利用しているデジタルツールで把握した情報は、自身のToDoリスト(別のデジタルツールかもしれません)に必要なタスクとして連携させます。例えば、部下の課題から発生した自身のフォローアップタスクなどを登録します。自身のToDoリストを紙でレビューした結果は、デジタルツールへフィードバックします。
実践のポイント:煩雑さを避けるために
- 連携のルールを明確にする: どのタスクをどのツールで管理し、いつ、どのように別のツールへ連携させるのか、具体的なルールを決めます。曖昧なままでは、結局どこに何があるか分からなくなります。
- 情報の一元化ポイントを決める: 最終的に自身の全てのToDoが一覧できる「マスターリスト」をどこか一箇所(多くの場合、普段最も利用するデジタルタスク管理ツール)に設けることを推奨します。紙の情報や他のツールで発生したタスクは、最終的にこのマスターリストに集約します。
- 定期的な見直しを行う: 設定した使い分けや連携のルールが本当に効率的か、運用しながら定期的に見直します。ご自身の働き方やタスクの種類は変化する可能性があります。
- ツールの「得意」を理解する: 各ツールの強みを正しく理解し、その「得意」を最大限に活かすように使い分けます。無理に一つのツールに集約したり、ツールの苦手な使い方をしたりしないことが、煩雑さを避ける鍵です。
- 「Inbox」の活用: どのツールで発生したタスクでも、一旦素早く投げ込める「Inbox」(一時的なタスク捕捉場所)を用意し、後で整理・分類する時間を設けると、突発的なタスク発生時にも落ち着いて対応できます。これは紙のメモ帳でも、デジタルツールの特定の受信トレイ機能でも構いません。
まとめ
紙とデジタルツールの併用は、それぞれの利点を活かせば、ToDo管理をより強力なものに変える可能性を秘めています。しかし、闇雲な併用は管理の煩雑さを招きます。
ご自身のタスクの種類を理解し、それぞれの性質に最適なツールを意図的に使い分けること、そしてツール間で必要な情報がスムーズに連携する仕組みを確立することが、煩雑さを解消し、ToDoを確実に完了させるための鍵となります。
この手順を参考に、ご自身のToDo管理システムを最適化し、日々発生する多様なタスクを効率的に処理できるようになることを願っております。