複数のタスクを効率的に把握・管理する統合タスクリストの作り方
自身の業務に加え、チームの進捗管理や関連部署との連携など、複数の種類のタスクを並行して管理することは、多くのビジネスパーソンにとって日常的な課題です。それぞれのタスクを異なる場所で管理していると、全体像が見えにくくなり、重要なタスクを見落としたり、優先順位付けに迷ったりするリスクが高まります。また、頻繁な中断が入る状況では、前に何をしていたか、次に何をすべきかを見失いやすくなります。
このような状況を改善し、タスク管理の精度を高めるためには、自身のToDoと関連する様々なタスク情報を一箇所に集約し、効率的に把握・管理できる「統合タスクリスト」の構築が有効です。このリストは、全体の見通しを立てやすくし、変化への対応力を高める助けとなります。
統合タスクリストが必要な理由
なぜ、自身のToDoだけでなく、関連するタスク情報を統合する必要があるのでしょうか。主な理由は以下の通りです。
- 全体像の把握: 個人のToDo、チーム内の共有タスク、他部署との連携事項などが分散していると、それぞれの関連性や全体の負荷が見えにくくなります。統合リストにより、全体を俯瞰し、相互の依存関係を把握できます。
- 優先順位の最適化: 個人のタスクだけでなく、チームや組織全体への影響度を考慮した優先順位付けが可能になります。重要なタスクへのリソース配分を最適化できます。
- 見落とし・漏れの防止: 複数の情報源から集まるタスクを一つにまとめることで、忘れていたタスクや、抜け落ちていた必要なアクションを早期に発見できます。
- 中断からの迅速な復帰: 中断が入っても、リストを見れば現在の状況や次に着手すべきタスクがすぐに分かります。思考の切り替えにかかる時間を短縮できます。
- 情報検索の効率化: 関連情報へのリンクなどをリストに含めることで、タスク実行に必要な情報を探す手間が省けます。
統合タスクリストの具体的な作り方
統合タスクリストを構築するためのステップを紹介します。
ステップ1:管理対象タスクの洗い出し
まずは、現在管理している、あるいは管理する必要があるすべてのタスクの種類を洗い出します。
- 個人の定常業務: 日々の報告書作成、メール返信、ルーティンワークなど。
- 個人のプロジェクトタスク: 担当しているプロジェクトに関する自身の作業項目。
- チーム内の共有タスク: チームで協力して進めるプロジェクトや業務のうち、自身の担当分や把握が必要な項目。
- 他部署連携タスク: 他部署への依頼事項や、他部署からの依頼で自身の担当となる事項。
- 会議関連タスク: 会議で決定したアクションアイテム、会議準備。
- その他: 突発的な依頼、個人的な学習や自己啓発に関するタスクなど。
これらのタスクが現在、どのようなツール(例: 個人のToDoアプリ、スプレッドシート、プロジェクト管理ツール、メール、紙のノートなど)で管理されているかを確認します。
ステップ2:統合ツールの選定と構造設計
洗い出したタスクをどこで、どのような形式で統合管理するかを決定します。デジタルツールが柔軟性と検索性に優れているため推奨されます。
- ツールの選定:
- プロジェクト管理ツール: チーム全体のタスク管理機能を持つものが多く、自身のToDoとチームタスクを関連付けて管理しやすいです。(例: Asana, Trello, Backlogなど)
- 高機能なToDoアプリ: プロジェクトやタグ付け機能が充実しているものであれば、多様なタスクを整理できます。(例: Todoist, Microsoft To Do, Thingsなど)
- スプレッドシート: 自由度が高く、カスタマイズが容易です。関数や条件付き書式を活用すれば、進捗管理も可能です。(例: Google Sheets, Excel)
- ノートアプリ: タスクと関連情報をまとめて管理したい場合に有効です。(例: Evernote, OneNote, Notionなど)
- リストの構造設計:
- リストに含めるべき項目を定義します。最低限、以下の項目があると便利です。
- タスク名: 具体的な作業内容を記述します。
- 期日: 完了目標日を設定します。
- 担当者/関係者: そのタスクの責任者や、関連するチームメンバー、部署を明確にします(自身のToDoの場合は自分自身)。
- ステータス: 未着手、進行中、完了、保留などの状況を示します。
- プロジェクト/カテゴリ: どのプロジェクトや業務に紐づくタスクかを分類します。
- 優先度: 重要度や緊急度に基づき、優先度を設定します。
- 関連情報リンク/メモ: 会議議事録、関連ファイル、詳細指示などが記載された情報源へのリンクや、簡単なメモを記載します。
- ツールによっては、タスクの親子関係を設定したり、サブタスクを作成したりすることも可能です。
- リストに含めるべき項目を定義します。最低限、以下の項目があると便利です。
ステップ3:情報の集約とリストへの入力
現在分散しているタスク情報を、選定した統合ツールに集約し、リストに正確に入力します。
- 紙のノートやメール、チャットツールなどに散らばっているタスク指示や依頼事項をリストに転記します。
- チームのプロジェクト管理ツールから、自身の担当タスクや、進捗を把握しておきたい重要なタスクをリストに取り込みます。
- 会議で発生したアクションアイテムは、その場で、あるいは会議後すぐにリストに追記する習慣をつけます。
この際、ステップ2で設計した構造に従い、漏れなく必要な情報を入力することが重要です。
ステップ4:リストの更新とレビューの習慣化
統合タスクリストは、一度作成したら終わりではありません。常に最新の状態に保ち、定期的に見直すことが、その効果を維持するために不可欠です。
- 随時更新: 新しいタスクが発生した場合、タスクの状況が変化した場合(開始、完了、期日変更など)は、すぐにリストを更新します。特に、会議中や情報連携の場でタスクが発生した際には、その場で簡易的にメモし、後でリストに正式に追加・更新するフローを確立します。
- 定期的なレビュー: 少なくとも1日に一度(始業時や終業時)、あるいは週に一度は、リスト全体をレビューする時間を設けます。
- 今日やるべきタスク、今週中に完了すべきタスクを確認します。
- 期日が近づいているタスク、優先度が高いタスクに注意を払います。
- ステータスが適切か、情報に不足がないかを確認します。
- 滞留しているタスクがないかを確認し、必要であれば原因を探り、次のアクションを考えます。
統合タスクリスト活用の実践ポイント
統合タスクリストをより効果的に活用するための追加のポイントを紹介します。
- 情報の入り口を限定する: 可能な限り、タスクに関する指示や情報は統合リスト、あるいはリストにリンクされる特定のツール(例: プロジェクト管理ツール、共有フォルダ)に集約するようチームや関係者と合意形成を図ります。
- 会議での活用: 会議の議題と関連タスクリストを開いて臨みます。会議中に発生したアクションアイテムは、その場でリストに追記するか、議事録の定位置に記録し、後でリストに転記します。議事録からタスクを抽出する時間をルーチンに組み込むことも有効です。
- 優先順位付けの基準を明確にする: 複数のタスクが並ぶ中で、何から着手すべきかを判断するために、自分なりの優先順位付け基準を持つことが重要です。例えば、「全体への影響度」「緊急度」「重要度」「所要時間」などを考慮します。
- 「いつやるか」を決める: タスクリストは「何をやるか」を示すものですが、「いつやるか」までを決めておくと、行動に移しやすくなります。特定のタスクをカレンダーにブロックする、一日の始めに「今日の最重要タスク3つ」を選ぶなどの方法があります。
- 紙ツールとの連携: デジタルツールを主軸としつつも、会議中の簡単なメモや、集中したい時の手書きリストなど、紙ツールが便利な場面もあります。紙に書いた内容は、後で忘れずにデジタルリストに転記・反映させるルールを徹底します。例えば、会議用のノートとは別に、アクションアイテム専用のメモ欄やページを設け、それを後で確認・転記する習慣をつけるなどが考えられます。
- 完了したタスクは記録を残す: 完了したタスクも一定期間はリストに残しておくことで、自身の達成状況を振り返ったり、過去の業務内容を確認したりする際に役立ちます。
まとめ
自身のToDoと関連するチームタスクや連携事項などを統合的に管理するリストを構築し、適切に運用することで、タスクの見落としを防ぎ、全体像を正確に把握できるようになります。これにより、中断が多い状況下でもすぐに業務に戻れたり、複数のタスクに優先順位をつけやすくなったりと、業務効率と生産性の向上に繋がります。
今回ご紹介した手順やポイントを参考に、ご自身の業務内容やチームの状況に合わせた統合タスクリストを作成・改善し、ToDoを確実に完了させるためのナビゲーションとして活用していただければ幸いです。