自身の実行タスクとバッファ時間を両立させるToDo管理:計画に「余白」を設ける実践手順
計画通りに進まない日常でToDoを確実に完了させるために
日々発生する業務は、事前に計画できるものばかりではありません。会議や部下からの相談、予期せぬ割り込みなど、計画にはなかったタスクが頻繁に発生し、自身の集中すべきToDoになかなか着手できない、あるいは中断によって完了が遠のいてしまうと感じている方は少なくありません。タスクリストは存在するものの、こうした突発的な要素によって計画が崩れ、ToDoが単なる「やりたいことリスト」になってしまいがちな状況を、どのように改善できるのでしょうか。
この課題に対し、計画に「バッファ(緩衝時間)」という概念を意識的に取り入れることが有効な手段となります。自身の集中して行うべき「実行タスク」のための時間と、予測不能な事態に対応するための「バッファ時間」を明確に分けて計画し、両立させる具体的な手順をご紹介します。
「実行タスク」と「バッファ」の時間を分ける考え方
従来のToDoリストは、主に事前に把握している実行すべきタスクを列挙し、優先順位をつけてこなしていくことに主眼が置かれがちです。しかし、予測不能な要素が多い環境では、この方法だけでは計画通りに進めることが難しくなります。
ここで必要となるのが、「バッファ」の概念です。バッファ時間とは、予期せぬ割り込み、会議の延長、突発的な相談、計画していたタスクの遅延など、計画外の事態に対応するためにあらかじめ確保しておく時間です。この時間を計画に組み込むことで、計画が崩れることへの耐性を高め、結果的に主要な実行タスクの完了率を高めることができます。
重要なのは、このバッファ時間を「何もしない時間」と捉えるのではなく、「不測の事態に対応するための必要な時間」として積極的に計画に組み込むことです。
計画にバッファを組み込む具体的な手順
自身の実行タスクを確実に進めつつ、不測の事態にも対応できる柔軟なToDo管理を実現するための具体的な手順は以下の通りです。
ステップ1:タスクを「実行」と「対応」に分類する
まずは、自身の抱えるタスクを大きく二つの性質に分類します。
- 実行タスク: 事前に計画し、集中して完了させる必要があるタスクです。資料作成、報告書作成、調査、特定のプロジェクト作業などがこれにあたります。比較的まとまった時間が必要で、中断されると効率が著しく低下しやすい性質を持ちます。
- 対応タスク(バッファ領域で処理): 予期せぬ割り込み、部下からの突発的な相談、急な会議設定、メールやチャットでの即時応答が求められる連絡など、予測が難しく、いつ発生するかわからない性質のタスクです。また、計画していた実行タスクが遅延した場合のリカバリー時間もこの領域に含まれます。
ステップ2:日次の計画に「バッファ時間」を具体的に組み込む
日々の計画を立てる際に、実行タスクに加えて「バッファ時間」を具体的な時間枠として設けます。
- 実行タスクの時間見積もり: 各実行タスクに必要な時間を見積もります。これまでの経験から、実際の作業時間よりも見積もりが甘くなりがちであることを考慮し、やや余裕を持った見積もりを心がけると良いでしょう。
- バッファ時間の確保: 1日の活動時間の中で、特定の時間帯をバッファ時間として確保します。例えば、午後の特定の時間帯や、午前と午後の間の移行時間などに設けることが考えられます。確保する時間の割合は、日常的に発生する割り込みの頻度や時間に依存しますが、まずは全体の時間の15%〜30%を目安に設定してみます。
- 計画ツールへの落とし込み: 使用しているカレンダーツールやToDo管理ツールに、実行タスクの具体的な開始・終了時間と共に、「バッファ時間」というブロックをスケジュールとして登録します。
ステップ3:バッファ時間内での対応と計画調整ルールを定める
確保したバッファ時間をどのように活用するか、事前にルールを決めておきます。
- 割り込み対応: 予期せぬ割り込みや相談が発生した場合、可能であればその場での即時対応ではなく、「〇時からのバッファ時間に対応します」のように誘導することを試みます。これにより、実行タスク中の集中途絶を防ぎます。
- 突発タスクの処理: バッファ時間には、その日発生した軽微な突発タスク(例: 短い返信が必要なメール、簡単な情報検索など)をまとめて処理します。
- 計画の再調整: もし午前中の実行タスクが遅延した場合、バッファ時間を利用して遅延分を取り戻したり、午後の計画を再調整したりします。バッファ時間を「計画を正常化するための時間」として活用します。
- バッファが余った場合: バッファ時間内に不測の事態が発生しなかった場合は、事前にリストアップしておいた「バッファ時間内にできるタスク」(例: 積読していた資料を読む、新しいツールの使い方を調べるなど、緊急ではないが重要なタスク)に取り組む時間とします。
ステップ4:紙とデジタルツールをバッファ管理に連携させる
紙とデジタルのツールを併用している場合、それぞれの利点を活かしてバッファ管理を効率化します。
- 紙での一時捕捉: 会議中や口頭での依頼など、急に発生したタスクは、手元の紙のノートやメモ帳に素早く書き留めます。これは中断を最小限に抑えるための「その場捕捉」の役割を果たします。
- デジタルへの移行と処理: バッファ時間になったら、紙に一時捕捉したタスクをデジタルToDoリストに移行します。この際、タスクの性質を再確認し、すぐに完了できるものはバッファ時間内に処理します。時間がかかるものや、特定の集中時間が必要なものは、改めて実行タスクとして計画に組み込みます。
- バッファ時間の確認: デジタルカレンダーやToDoツールで確保したバッファ時間を定期的に確認し、時間の使い方を意識します。
実践を成功させるためのポイント
- 現実的なバッファ時間の見積もり: 最初はバッファ時間の見積もりが難しいかもしれません。1〜2週間、実際にバッファとして確保した時間と、不測の事態への対応に要した時間を記録し、自身の日常における「予測不能性」の程度を把握することから始めます。これにより、より現実的なバッファ時間を設定できるようになります。
- バッファ時間を「非生産的な時間」と見なさない: バッファ時間は、効率を落とす時間ではなく、計画通りに進めるために不可欠な「安全弁」であり、「投資」であるという認識を持つことが重要です。
- 柔軟性を持つ: バッファ時間も絶対的なものではありません。緊急度が非常に高い突発事態が発生した場合は、計画の変更も必要になります。しかし、バッファ時間があれば、計画変更の際の混乱を最小限に抑えることができます。
- チームとのコミュニケーション: チームメンバーや関係者と、自身の「集中時間」や「対応可能時間(バッファ時間)」について共有することで、不要な割り込みを減らし、スムーズな連携を促進できる場合があります。
まとめ
自身の実行タスクと、会議や割り込みによる予測不能な業務への対応を両立させるためには、単にタスクをリストアップするだけでなく、計画に「バッファ時間」という「余白」を意識的に設けることが有効です。タスクを「実行」と「対応」に分類し、日々の計画に具体的なバッファ時間を組み込み、紙とデジタルツールを連携させて効率的に運用することで、計画通りに進まない日常においてもToDoを確実に完了させ、自身の生産性を高めることができるでしょう。この考え方を取り入れ、柔軟で確実なToDo管理を目指していただければ幸いです。